熊本県 児童養護施設[グループホーム]

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FDDコンセプト1
 
FDDコンセプト2

(施設ではなく)「家」であること
「家」とはこどもたちにとって安らぎのある守られる場所の象徴でなくてはならない。
通り過ぎた過去を振り返ることや、まだ輪郭を表そうとしない未来に想いをはせることも、現在というこの時に思惟が行われ、そうした複雑かつ鋭敏な感受性を受け止める場所には「家」(という形式)が相応しい。
みんなが集まり楽しみを共有する広いリビングがあって、ひとり物思いに耽る部屋がある。また、職員の先生やごく親しい仲間だけに吐き出す感情を静けさとともに受け止める場所もあり、そうした居場所の多様さとその場所を自らの意思で選び取ることのできる自由さを「家」は許容する。
深く陰影を落とす軒の深さも、遠くから自らの住処であることを象徴する家型としての屋根形も「守られる」ことへの隠喩を含むものである。
 
樹木に包まれること
緑(樹木)が本園の歴史の長さを刻印している。
そうした緑あふれる風景は、ここを巣立ったこどもたちの記憶を継続的に紡ぐものとして、あるいは本園にかかわるすべての人の誇りとして第一義に守らなければならない。既存の食堂棟が建っていた配置内に忠実に再配置することで、樹木伐採を回避する。また既存食堂裏の大木2本を建物の裏に留まっている現況から、グループホーム2棟の間から大木を視認させることによって、樹木に囲われた本園の性格がより豊かになると同時に、(既存食堂が道に(社会に)対して背を向けていた現況から)グループホーム2棟の間を抜ける風道が、社会に対する本園の開かれた精神の象徴となるだろう。
 
様々なコミュニティの創出
二棟のグループホームは空地を介して向き合う。二棟はほぼ同一の面積配分としながらも方位的条件や空地(外部空間)との良好な関係性を形成することを目的として結果、平面形の微妙に異なる二棟で構成される。人がひとりひとり独自性を有するように(独自性を認め合う社会が望ましいように)、同じ建物の繰り返し配置ではなく差異を有するふたつの建物配置が豊かな風景を新たに形成する。
1棟あたり10人の構成単位となるが、二棟にはさまれた空地を介して最大20人のコミュニティの創出の機会が与えられる場所となる。当該空地は「テラスリビング」と呼応し、グループホーム間の交流や本園での活動様態の表出、そして上述の多様な居場所のひとつとして様々な行動様態の広がりを生むだろう。
また、二棟によって囲われたテラスリビングはダイニングキッチンからの水平的な広がりとして視覚的な室内空間の拡張域として援用するとともに、どこにいても感じることのできる(みんながひとつの同じものをみているという)共有意識を高める象徴空間としその役割を担うだろう。
 
環境(ランニングコストを低減するための省エネルギー対策)
省エネルギー対策等級4を目指し、建築部位(屋根、壁、床)に係る断熱性能の向上を計るとともに、使用設備機器の厳選を行う。また、風の取込みと室内循環を促すことを目的として、階段を含めたふたつの吹抜け部を設けることとし、個室においても開閉可能とする欄間を扉上部に設置することで中間期における冷暖房起動を最小化とする省エネルギー対策を講ずる。
個室に設けられた欄間は風の循環を促進するだけではなく、個室とパブリックスペース(ダイニングキッチンや廊下など)の境界性を弱め、一定のプライバシーを確保しながら「気配」として個々人の内実性を伝搬する「心の」扉として家族の親和性を生むだろう。

FDD外観1
FDD外観2
FDD外観3
FDD外観4
FDD外観5
FDDダイニング
FDDリビング1
FDDリビング2
FDD個室
FDDリビング3
FDD階段