群馬県 産婦人科クリニック増築棟[デザイン監修]

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FLCコンセプト

隣接する前面道路の拡張計画に伴い、本医院は前橋市と太田市を結ぶ主要幹線道路に直接的に面することとなり、本クリニックの表徴性の在り方を含めた街並形成への参加の様態が問われると共に、騒音や振動などに対する処方を建築的に解くことが求められている。
 
外部環境に対する応答として
「病室」に於いては、デリケートな精神状態にある患者へ良好な室環境を提供するために、騒音源となる前面道路に対し、建築基準法上の最小寸法(750×1200)の開口に制限することで騒音対策とする。また、既存建築との関係上、「北向き」配置とならざる得ない「個室」へ自然光を導き入れるためにトップライトを設け、トップライト上部の半透過性のスクリーンを経由して届けられる柔らかな拡散光に依って、日中を通して均一な光環境に満たされた明るい「個室」とする。
3階にあっても、セットバックして配置される「マッサージルーム」、「サロン」は、半透過性のスクリーンに依って形成される緩衝帯に依り、騒音への対策とすると共に、スクリーンに依って良好な風景を切り取る(マスキング効果)ことで、『非日常空間』としての内部空間の在り方に寄与する。ラウンジ前のテラスも同様に、喧噪からの距離をとるために「ラウンジ」へ与えられた処方装置となるが、内部空間の延長としての視角的に広がりと、『語らいの場』として相応しい多様な風景が与えられることを期待している。
 
街並への表徴性
良好な環境を取得するために設けられた『半透過性のスクリーン』であるが、同時に、それは昼間に於いては背後からの(南面からの)光を受け、夜間にあってはそこに仕込まれた照明に依り照らされることで、『行灯』のような隠喩を含んだ発信性の高い街並への上質なメッセージとして表出される。すなわち、幹線道路沿いに建つ過剰な形態や色彩で溢れた建築群との競争に組込まれるのではなく、「静謐に佇む」ことでそれら建築群との差異を生み、強い存在感として街並へ参加することを意図している。
 
既存建築との近似性
既存建築の特色のひとつである「円弧」の形態を本増築建築に於いても採用する。
同じ言語で語られる建築は、両者の近似性に依り一対のものとしての了解を生み、ふたつの建築に依って形成される「エントランスコート」は新たな外部空間としてここに創出される。
街並に提供されたポケットパークのようなこの外部空間は、エントランスコートへ開かれたプログラム(母親学級での活動)と同様に、『開かれた医院』の意思表明として外部へと発信されていくことを主目的とする。

FLC外観1
FLC外観2
FLC模型写真