地方都市の駅前のロータリーに面してそのクリニックはある。
1階に内科を中心とした地域医療を標榜した「町のかかりつけ医」として、すなわち何か身体に問題が生じた時に気軽に立ち寄れる間口の広い医院として、2階に医療性を依拠としたリハビリテーションの実践の場として計画された。
駅前ロータリーに面しながら、その反対側に位置する駐車場側もまたやがて近隣住民の主要な動線となることを評価し、(クリニックとしては例をみない)二つの出入り口を有するクリニックとして計画を行なった。「主出入り口」と「サブの出入り口」といった階層性が生じることを可能な限り回避しながらふたつの出入り口を等価に扱うことを目指す。等価として取り扱うことで、その出入り口を結ぶ経路が廊下というよりも待合室、中待合といった膨らみ(小広場)をもつ「道」という様相として立ち現れることがここでの主目的である。地域に開いていくことを目指している本医院にとって街路が内部に挿入され、結果、診察室などの諸室を「家」と見立てた街路性が生まれることが地域の交流の場として相応しいと考えたことが理由である。
2階においてはリハビリの機器利用の際、天井を見上げる様態が多いことに着目し、天井材によって視線が受け止められる窮屈さを排除し、抜け感のあるつまり視点を結ぶことのない暗闇に消えていくことを目的として格子状の天井形式を採用した。尚、独立的に存在する1、2階のクリニックに共有性を与えることを目的として使用される建築言語(格子状の天井)はその場所の適切性判断を行いながら共通化させている。