鹿児島 精神科クリニックデイケア

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MDCコンセプト

本計画は精神科デイケア施設である。
「外来診療を補完する治療の場」として、あるいは「社会復帰を目指すリハビリテーションの場」として、集団精神療法、作業療法、レクレーション活動、創作活動、生活指導が行われると共に、「長期慢性患者の憩いの場」として、安心して居ることのできる場所を創出することが主たる機能となる。
 
『がらんどう』あるいは『公園』が本計画の参照体(モデル)となる。
『がらんどう(伽藍堂)』とは字義の通り、何もない空間を示す。
 
「機能」に呼応する「部屋」が1対1の関係で形成される構成の在り方ではなく(たとえば食堂が食事をとるための一義的な場所にのみ固定化されるのではなく)、ひとつの「部屋(空間)」に様々な「機能(コト)」が発現するような空間の在り方を目指す。
何もない空間への指向とは、部屋に一定の性格(役割)を与えるのではなく、様々な利用形態に可変的に対応していく流動性のある空間への指向を言う。たとえば様々な展示に違和感なく背景としてのみ存在することが求められるギャラリー(美術展示室)のような空間が上述の可変的流動性を生む空間として相応しい。
また部屋間の接続方法にあっても、旧来の廊下を介してそれぞれの部屋(空間)がツリー状に繋がる接続の在り方ではなく、部屋同士が廊下等の通路空間を介することなく緩やかに繋がることで、異なる活動域が自立性を保ちながらも波紋のように影響を与え合うような良好な関係性を形成する効果を期待している。
活動域の緩やかな関係性に依って(多くの活動内容を間接的に知ることに依って)、通所者の参加への喚起を促すことになると共に、「活動に実際に参加することから、離れて様子を伺う」といった段階的なレベルでの参加様態を許容する。
通所者と医療従事者間の関係にあっても、それぞれの活動の視認性が高まることに依り、両者がフラットな関係に還元されて、「監視」から「見守る」といった緩やかな関係性が生まれるだろう。
 
一方、『公園』は、同質状の空間域にあっても微細な起伏ある特性の集積によって形成されているという点に於いて、『がらんどう』の発展形として捉えたい。
「遊園地」に於ける行為が一義的かつ受動的に決定されてしまう点に対し、『公園』にあっては「行為」を能動的に発見する楽しみがある。
また、『公園』は一様な風景として視認されながらも、木々の配列や種別、あるいはベンチ、遊具といった装置的な設えによって多様な分布特性を示している。そしてそこを利用する人々は趣向的、目的別に(あるいは無目的に)適切で好ましい場所を選びとり、自らの活動を能動的に開始する。
 
『がらんどう』の持つ可変的流動性に、『公園』の持つ分布的変化を付与したい。何の手掛かりのない空間ではなく、通所者及び医療従事者が活動を能動的に始めるための動機付けとなるような磁場を形成し、生き生きとした活動が行われる場所とすることが本計画の命題となる。
南面全てをガラス面とすることで、南側に広がる隣接する林を取り込む。内部空間に於いて、ガラス面となる壁一面が「自然(緑)」の景色を映し出し、季節の移り変わりを含めた様々な表情を与えることで、ワンルーム的に広がる空間に分布的変化をもたらすことになる。
また平面計画上にあっては、半外部空間で展開される活動を含め、層状に活動が重なることで、あるいは吹抜けによって上下階の活動が視認できる関係性を構築することで、活動が生き生きと展開されると同時に多様な空間体験が多様な活動を促す。敷地の持つ特性に呼応するように、建物中心部で45°に振った平面形は視線の多様性を生み、上述の緑溢れる南側に対しては、囲い込まれることで親密性が生まれ、内部環境にとっては街路的な界隈性のある風景が形成されるだろう。
『がらんどう』としての可変的流動性のある空間は、何にも規定されない自由さの証でもある。また、いくつもの特異点により磁場が生まれ、起伏に富んだ表情を見せる様々な場所が生まれたならそれを『公園』と呼んで良いのではないか。
 
精神的病を抱えた人にとって必要な特別の場所などあるはずがない。社会の中に確かに存在している「場所」を改めてここにモデルとして抽出し、再構築すること。たとえば公園の中を散歩するときに感じる気持ち良さの在処を改めて問いかけるような。

 
MDC外観1
MDC外観2
MDCエントランスホール
MDCホール
MDCコート
MDC浴室
MDC多目的室
MDC2階ホール
MDC2階テラス