宮崎県 内科・リハビリテーション科クリニック

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NCHコンセプト2

100年目の若き水夫たちへ
 
大淀川が太平洋にまさに吐き出されようとするその直前に円弧を描くようにして大きく迂回する平地の広がりがあり、そこに今回の計画地はある。
不思議と曲がりくねる川の形質の理由を解明することはここでの目的ではない。しかしこの川の流れを辿ったその先には本院が確かにあり、50余年先より始められた先人たちの夢や使命感といったものを、大きく迂回するこの場所で受け止め、やがて海へと解き放つ場所としては相応しい。
いまここに、100年目の若き水夫たちへ。
 
 
「森」は現象であり、視覚的に捉えられるものではなく体験の中でのみ知覚可能となる。
そうした「森」の現象性を空間として抽象的に記述し、「森」のもつ多様性のなかで医療が行なわれることへの試みである。
 
見上げるほどの大きな空間があり、手をあげると届きそうな小さな空間がある。また、光が豊かに降り注ぐ場所と、反射光のみを手がかりとする場所をつくる。それらを両極的に配置するのではなく、自然を参照体とし、(ヴォリュームと光に)量と質の変化を階調的に与え、その(ヴォリュームや光の分布の)差異が空間に多様性を与えることを目的とする。空間の多様さは利用者の趣向性の発現を生み(お気に入りの場所をみつけ)、運営においても「医療プログラムと空間の適応性」(空間ヴォリュームの違いによって医療プログラムの運営を行なっていくことや、プライバシー性の有無によって医療プログラムの場所が選び取られること)の判断と新たな医療プログラム創出(空間が新たな医療プログラムの発見や展開を生むこと)に期待するものである。具体的には、あまり事例をみないプライバシーが確保されたテラス(外部空間)などで行われる新たな医療プログラムの実践などがそれに該当する。
 
アイストップ(視線が受け止める到達点)には原則的に樹木を配置し、開口が切り取る風景を慎重に選び取り、空間に映し出される風景を「樹木」や「空」などに限定することで、直喩的に「緑に囲われた空間」とし、日常とは異なる「ハレ(特別な)」空間とする。そうして設けられた窓は同時に、「重力換気」の発現を生み、中間期においては機械空調に頼らない省エネルギー効果を生むことを目指している。
積極的に開け放たれた窓から聞こえてくる音や、通り抜ける風、そして水盤に注がれる水の音などが、間仕切り壁を最小化とした行き止まりのない回遊的空間の隅々まで行き渡る時、近隣コミュニティーの豊穣性やスタッフ間のセクショナリズムの壁を容易に乗り越えてゆく繋がりや広がりとして、本院の持つ開放性や自由さの証としての象徴となるだろう。

NCH模型写真1
NCH模型写真2
NCH模型写真3
NCH模型写真4
NCHスケッチ1
NCHスケッチ2