プライバシー保護と開放性
2面道路を有する角地にある本敷地に於いて、道路側からあるいは隣地住居者からのプライバシーは守られなければならない。しかし一方、都市景観を構成する一住居として、過度に閉鎖的表情になることは「町並みの在り方」の視点からも避けなければならない。つまりここでは『開き』そして『閉じる』といった矛盾する命題が与えられている。
今回の計画ではその解決法として、「本体」と「外部」との間にバッファーとなる『回廊』『路地』『コート』といった緩衝空間を設える。それらは外部(都市)に対しての緩やかな境界となり、様々な外的要因(視線、騒音等)を弱め和らげる。と同時に内部の気配もまたそれら緩衝空間を経由し外部へと送り出され、都市との友好的関係が形成される。そして結果として、形態上に於いても陰影のある奥行きのある彫りの深い表情を与える。
光、風の通り道
コートを布置することにより、プライバシーに憂慮しながら自然光の多面的な取り入れを可能とし、日中を通して明るい内部空間を実現する。と同時にコートは重力換気を派生させる「建物全体換気」に於ける風の通り道になる。