9年の歳月を経て、その家は増築を必要としていた。
当初想定していなかった隣地のマンション建設によって環境改善の必要があったこと、多忙な施主にとって、もはや「家」はやすらぎの場所と同時に仕事場の拡張域としても機能する必要性に迫られていたことが増築の主たる目的であり、補完的には(新築時にはイメージさえもしなかった)老後を見据えた計画や、やがて巣立っていく子ども達へのまなざしがそれに加えられた。と同時に、施主である夫婦同席の際には語られることのないパートナーに対する気遣いを依拠とする個別的要望は、「家族」の親和性を形とすることへの僕に与えられた大きな命題となった。