「まゆ」を建築の参照体として始める。
ただ、「まゆ」の形態的近似性を目指すのではなく、「まゆ」を形成している構造や内包することで生み出される空間的形質にこそ着目したい。
楕円半形のアーチを長辺方向に並べていく。
いくつかの楕円半形のアーチを斜め方向に布置しながらも、短辺軸へ投影した楕円の線形をすべて一致させることで、アーチの外側と内側に架かるダブルスキン(外皮、内皮)と構造体であるアーチの接合のルールを簡易化する。
「外皮」となるルーバー(人工木)は雨露をしのぎながら直接光を軽減することで室環境を整え、一方、布を織るように編み込まれた木材に依る「内皮」は、局所的に先の楕円半形のアーチの地震力を負担する役割と、編み目に依る粗密度の可変化に依り、空間ヴォリュームと光の分布を多様化する。ここでは構造的役割と空間の質(ヴォリュームと光の分布)の可変操作性をひとつの素材とシステムに依って達成させていく試みである。
配置計画上は、タクシー乗り場、待合室から環境広場への視覚的繋がりを生むことを目的とし、ボリュームのある駐輪場を半下階に設置する。半下階を駐輪場として設けることで生まれる屋階(ステージ)は、待合室の拡張域として多様な利用形態を促すとともに、交流広場を客席として見立てたステージとして、ハレの日(お祭り)における地域のコミュニティを形成するその舞台となるだろう。
地上に降り注ぐ光は「木漏れ日」のそれと似ている。
やわらかな光で満たされたその空間の形質こそが、上州富岡がもつ街の固有の由来を隠喩として記述するだろう。