インスタレーションの設置場所を「代官山ヒルサイドテラス第二期C棟の中庭」に設定する。
代官山の街並はヒルサイドテラス内に随所に配置された外部空間の設えによって上質さと豊かさが与えられており、その中にあって当該中庭は「街路を敷地内部へと引き込んだ」ようにも、「(ショップ等)内部空間の拡張域」としても捉えられる。今回はそうした両義的性格を有する中庭を「内部化へと」増幅することを主題とする。
幅、奥行、高さがそれぞれおおよそ10mの容積を有する中庭空間をリボンにより満たすこと。そして吊るされたリボンの下端の線形を家型(内部からは天井形)に形成し「家の形象化」を計る。
繊細なリボンを経由し届けられる自然光は、拡散を繰り返しながら内部空間特有の穏やかな光の環境を形成し、結果、光によってうまれる影もまた輪郭が不確かな様々な光の分布を壁面にそして床面に与える。
そしてリボンの持つ布という特性から、中庭に満たされる音を吸い取るようにして静寂さを生むだろう。
中庭に設けられた「家」としての表徴性は街路に対し親和的に開かれるが、中庭の下から見上げる「家」のシルエットは奥行を持つ点描画のように輪郭を弱め、内部空間の有する特性が現象としてのみ立ち現れる。
中庭に穿たれた開口部から風が通り抜ける。
リボンの動きが風のカタチを記述し、やがて風がその動きをやめたとき、緩やかな軌道を持ちながら「家」が静かにその輪郭をあらわすだろう。